最初にわかったんは、
密告したんがWやない、いう事実やった。
調べていくうちに、線が一本、変な方向に伸びた。
そこにおったんは――Yさんや。

後からわかった話や。
YさんとWは、既に付き合ってた。
ワイが距離を置いた頃には、もう始まってたらしい。
思い返せば、辻褄は合う。
Wがやたらワイの視線を気にしてたこと。
Yさんが、ある時期から妙によそよそしくなったこと。
ワイは、
何も知らんかったわけやない。
薄々、気づいてはいた。
ただ、確かめへんかった。

ここから話は、ややこしくなる。
盗撮動画を撮ったんは、Wや。
それは間違いない。
会社のトイレにカメラを仕込んだんも、Wや。
その時使われたカメラが、
ワイがプレゼントしたやつで間違いない。
Wは、Yさんに言うたらしい。
「盗撮したん、ヒマやで」
Yさんは信じた。
いや、信じたかったんやと思う。
ワイの漫画も、視線も、全部知ってたから。
警察に行ったんも、Yさんや。
ほんで――
ワイは、自首した。
「ワイがやりました」
そう言うた。

なんでや、と思うやろ。
盗撮してへんのに。
せやけど、
ワイは“やってへん”とは言えんかった。
ワイは、既に盗撮してたからや。
いや、正確には――
ワイはそれを「観察」やと思ってた。

Yさんの席を映すカメラを、
長期間、回してた。
会社の中で。
数か月分のデータが、SDカードに入ってた。
イヤらしい映像はない。
ただ、座る姿勢とか、仕草とか、
コーヒー飲んだり、笑ってる表情見せたりとか。
人間観察。
それがワイの趣味やった。
そのカメラの存在に、
Wはとっくに気づいてた。
SDカードの中身も、
バックアップ取ってたみたいや。
ワイの行為は、
Wの意思によってどうにでも転がる状況。
ワイがやったことは悪質やったのか。
それを決めるんはワイやない。
そもそも、そのカメラをWにプレゼントする行為自体が、おろか極まる行為やった。
結果として、Wの手に渡ったカメラにより事件が起こされたと。
今にして思えば、ワイの行為に対する復讐やったんやな。

それでもや、
会社のトイレにカメラ仕込んで、自分の彼女を盗撮するて、
正直、理解できへん。
せやけど、しょうがない。今更ゆうてもな。
ワイは言い訳せえへん。
盗撮したんは事実や。
漫画でYさんを性的に描いたんも事実や。
線は、とうに越えてた。
それと同時に、
Wの気持ちにも、気づけてへんかった。

彼は、
ワイが好きやったらしい。
仕事も、感性も、
ワイが向ける視線も。
支配でも、嫉妬でも、
それだけでは足りへん感情やった。
(Yさんを撮ってた)カメラをプレゼントされた時がキッカケやったんやろうか…
もうええわ、と思った。
ワイが自首したらしまいや。
ワイは罪を犯したんや。
Wとも、Yさんとも、腹割って話し合った。
罵倒も、涙も、なかった。
Wは会社を辞めた。
Yさんとも別れた。
3人仲良かった時を思い出す…

ある日、
Yさんが、そっち系の店で働いてるとの噂を聞いた。
Wの本心にも気づいとったわけで、色々悩んでたんやな。
ほんでや、
なんやかんやワイは、
その店に通っとる。
色々あって、最初は戸惑ったけど、ハッキリいって最高や。
向こうも仕事やしな。

Wとも話をした。
皮肉なもんや。
昔みたいに、
人生の話をするようになった。
元通りやない。
でも、嘘もない。

人生、
何が起こるかわからんな。
せやけど一つだけ、
はっきりしたことがある。
断罪されたんは、
一番わかりやすい“悪”やなかった
ほんまに怖いんは、
自分では「正しい」と思ってた
静かな行為や。
それを、
ワイは最後まで手放されへんかったんやな。









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