黒い歴史2012 第1章 出会い:私小説的記録

会社に入った春、男Wとは同期やった。
WEB制作チームに配属された新人は三人。その中で、最初に話しかけてきたのがWや。
人見知りのワイやけど、すんなり話せる雰囲気を持ってる男やった。
昼飯で色々話した。

「漫画描いてるん? ええやん、それ」

それだけの一言やった。
せやけど、その声は妙に距離が近くて、否定も評価もしてへん、ただ“興味”だけを向けてくる感じがした。

ワイはその時から漫画を描いてて、SNSにちょこちょこ上げてた。
仕事終わりにネーム切って、夜中にアップする。
反応は少ないけど、描かずにおれんかった。

Wは日頃から、仕事プライベート、関係なく積極的に話しかけてきた。
ワイも悪い気はしてなかった。

夜、仕事帰りにドライブに連れ出されたこともある。
コンビニでコーヒー買って、特に目的地もなく走る。

「将来、何したいん?」

ハンドルを握ったまま、Wは前だけを見て聞いてきた。
ワイは漫画の話をした。
仕事にするつもりはないけど、手放す気もない、と。

Wは黙って聞いてた。
否定もせえへんし、励ましもせえへん。
ただ、ワイが喋り終わるまで、ラジオの音量を下げたままにしてた。

職場には、女性の同期もおった。
Yさんや。

よく三人で話すことが増えた。
三人で飲みにいくこともあった。


制作の愚痴とか、どうでもええ話とか、そんな時間やった。
Yさんはよう笑う人で、相槌も多い。
ワイが漫画の話をすると、必ず「へえ」と言うてくれた。

その「へえ」が、ワイには少し特別に聞こえた。

Wは、そんな様子を横目で見てた。
何も言わへんけど、視線だけは外さん。
後になって思えば、あの時すでに、彼はよう見とったんやと思う。
ワイの視線の向きも、声のトーンも。

誕生日が近いと知って、ワイはWにプレゼントを用意した。
小さいカメラや。
長時間録画できるやつで、ペットの見守りとか使える。
性能はバッチリ確認済みや。

「前にこういうやつ欲しいゆうてたやろ」

そう言うて渡したら、Wは一瞬だけ驚いた顔をして、すぐ笑った。

「……覚えててくれたんや」

その時の笑い方が、妙に印象に残ってる。
嬉しいのか、困ってるのか、判別つかん笑いやった。

この頃のワイは、
誰かに見られてることを、
悪いことやとは思ってへんかった。

男同士で誕生日プレゼントの交換なんて、正直気持ち悪い。
せやけど、その時は「仲間」やと思ってた。
少なくとも、ワイは。

この頃はまだ、何も起きてへん。
いや、正確に言えば――
何も起きてないように見えてただけやった。

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