会社に入った春、男Wとは同期やった。
WEB制作チームに配属された新人は三人。その中で、最初に話しかけてきたのがWや。
人見知りのワイやけど、すんなり話せる雰囲気を持ってる男やった。
昼飯で色々話した。

「漫画描いてるん? ええやん、それ」
それだけの一言やった。
せやけど、その声は妙に距離が近くて、否定も評価もしてへん、ただ“興味”だけを向けてくる感じがした。
ワイはその時から漫画を描いてて、SNSにちょこちょこ上げてた。
仕事終わりにネーム切って、夜中にアップする。
反応は少ないけど、描かずにおれんかった。
Wは日頃から、仕事プライベート、関係なく積極的に話しかけてきた。
ワイも悪い気はしてなかった。
夜、仕事帰りにドライブに連れ出されたこともある。
コンビニでコーヒー買って、特に目的地もなく走る。

「将来、何したいん?」
ハンドルを握ったまま、Wは前だけを見て聞いてきた。
ワイは漫画の話をした。
仕事にするつもりはないけど、手放す気もない、と。
Wは黙って聞いてた。
否定もせえへんし、励ましもせえへん。
ただ、ワイが喋り終わるまで、ラジオの音量を下げたままにしてた。
職場には、女性の同期もおった。
Yさんや。

よく三人で話すことが増えた。
三人で飲みにいくこともあった。

制作の愚痴とか、どうでもええ話とか、そんな時間やった。
Yさんはよう笑う人で、相槌も多い。
ワイが漫画の話をすると、必ず「へえ」と言うてくれた。
その「へえ」が、ワイには少し特別に聞こえた。
Wは、そんな様子を横目で見てた。
何も言わへんけど、視線だけは外さん。
後になって思えば、あの時すでに、彼はよう見とったんやと思う。
ワイの視線の向きも、声のトーンも。
誕生日が近いと知って、ワイはWにプレゼントを用意した。
小さいカメラや。
長時間録画できるやつで、ペットの見守りとか使える。
性能はバッチリ確認済みや。

「前にこういうやつ欲しいゆうてたやろ」
そう言うて渡したら、Wは一瞬だけ驚いた顔をして、すぐ笑った。
「……覚えててくれたんや」
その時の笑い方が、妙に印象に残ってる。
嬉しいのか、困ってるのか、判別つかん笑いやった。

この頃のワイは、
誰かに見られてることを、
悪いことやとは思ってへんかった。
男同士で誕生日プレゼントの交換なんて、正直気持ち悪い。
せやけど、その時は「仲間」やと思ってた。
少なくとも、ワイは。
この頃はまだ、何も起きてへん。
いや、正確に言えば――
何も起きてないように見えてただけやった。










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