黒い歴史2012 第2章 亀裂:私小説的記録

距離が縮まった、と思った頃からや。
Wの態度が、少しずつ変わり始めたんは。

最初は冗談みたいやった。
ツッコミのつもりなんか、背中を軽く蹴ってくる。
力は弱いし、周りも笑ってる。
ワイも最初は笑って流した。

「ノリやん」

そう思おうとした。

せやけど、回数が増えた。
人がおる時だけやなく、二人きりの時も。
頼んでもないのに、コンビニ行ってこいと言われるようになった。

「ついでやん。同期やろ?」

その言い方が、妙に自然で、断る理由を奪ってくる。
ワイは徐々に、Wを避けるようになった。

仕事では、ワイは相変わらず制作が好きやった。
指示されたこと以上に考えて、手を動かす。
コードを書くのも、デザイン詰めるのも苦にならん。

結果、メインの制作を任されることが増えた。

そのたびに、Wは黙った。
露骨に不機嫌になるわけでもない。
ただ、空気が冷える。

「最近、評価されてるな」

ある日、そう言われた。
声は平坦で、感情は乗ってへん。

褒められてるようで、どこか試されてる感じがした。

飲み会の話が出たんは、その少し後や。
断ろうとしたけど、Wはやたらしつこかった。

「来いや。Yさんも来るから」

ドキッとした。ワイの気持ち知っとるんやな。

店は騒がしかった。
酒が回って、場のテンションも上がっていく。

その直後や。

「そういやさ」

Wが、急に大きめの声を出した。

「ヒマさん、漫画作ってますよね?」

一瞬、店の音が遠のいた。

「出てくる女の人、Yさんモデルらしいですよ」

笑いが起きた。
誰かが「マジで?」と言うた。
Wは、スマホを取り出して、ワイのSNSアカウントを見せ始めた。

「ほら、これとか」

漫画も、記事も、全部や。
ネタにされて、弄られて、消費された。

ワイは何も言えんかった。
否定も、肯定も、できひん。

Yさんはもうおらへん。
説明する相手も、謝る相手もおらへん。

帰り道、Wは何事もなかったみたいに言うた。

「冗談やん。空気読めよ」

その言葉で、何かが切れた。

帰宅して、メールを打った。
当時はまだ、LINEやなくてメールやった。

互いにええことないから、もう関わらんとこ
感情の無駄遣いや
前向きに生きよ。それだけや

送信して、スマホを伏せた。
返信は来えへんかった。


それから一週間、何も起きんかった。
Wも、Yさんも、普通に会社におった。

せやけど、週明けの月曜、朝一で知らされた。

「Yさん、辞表出したらしいで」

理由は誰も知らん。
けど、社内の空気だけが、妙にざわついていた。

ワイはその時、
自分が何かを壊したとは思ってへんかった。

ただ、
壊れかけてたもんに、触れてしもた
そんな感覚だけが、残ってた。

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